理想の男~Magic of Love~
舞台の台本を書いている人はみんな詩人になるのだろうかと、私は思った。

藤は笑顔を消すと、息を吐いた。

その瞬間、端正な横顔に陰が見えた。

…つらいんだろうな。

失恋したばかりだから。

…悲しいんだろうな。

振られたばかりだから。

私はその横顔に答えることができなくて、ただ一緒に歩いた。

「――もっと早かったらなあ…」

藤が呟いた。

「えっ?」

何のこと?

私の声に気づいたと言うように、藤はハッと我に返ってこちらに視線を向けた。
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