理想の男~Magic of Love~

「魔法が使えたら、なんてな」

彼の声を彷彿とさせるようなその音色は、私の心臓を鳴らせた。

目を閉じて音を奏でるその姿に、私は今流れている時間を忘れてしまった。

さっきまで浩治と一緒にいたことなんか、すっかりと忘れてしまった。

しばらく彼を見ていたら、プツリと音が途切れた。

終わった、のかな?

それまで音を奏でていた藤の目が開いた。

漆黒のビー玉のような彼の目が、私の方に向けられた。

「――えっ…?」

バリトンの声に、私の心臓がドキッと鳴った。

「何で?」

藤は呟くように言って、私を見つめていた。
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