旦那様は見知らぬ方⁉



「チャコ〜」

「にゃぁ〜お」

「元気にしてた?ごめんね、置いてきぼりにして」

「可愛いな、いくつ?」

「5歳かな」

「おいで」

「ゔゔっ…」

「大丈夫、この人は悪い人じゃないよ」


美華のその一言でついさっきまで俺を警戒していたのに俺の元へと寄ってきた。

賢いなこいつ


「気分は落ち着いたか?」

「うん…ありがとう。まさかあの時の人だったなんてね、ずっとどっかで嗅いだ覚えがある香りだと思ってた」

「俺は本当にあの時惚れた。あの切なげな瞳をして俺に向けた笑顔でね」

「えっ…」

「ってのは嘘」


何で素直に言えないんだ…


「あのね、私政略結婚って本当に嫌だったの。父と実母を見てて子供ながらに自分はこんな結婚はしたくないって思ってた。だからああやって言ってくれて嬉しかった」

「うちの両親も政略結婚だけど、2人は結婚してから恋に落ちて上手くいった。だけど、皆が皆うちの両親のように上手くいくとは限らない、だからそれだけはずっと嫌だと俺も思ってた」

「うちの両親も一度は恋に落ちて、それによって私が生まれた。だけど、父はどんどん変わって行った、偉くなれば偉くなるほどにね。でも、母はそんな父でもずっと愛しつづけていたんだって」


そんな両親のすれ違いが続く中

彼女が小学生になった頃に母親は妊娠したらしい。

しかし、母親は乳がんに侵されていた。

周りは子供は諦めろと言ったが反対を押し切り子供を産んだらしい。

子供が産まれてから1ヶ月後母親は亡くなったそうだ。

そうして生まれたのが彼女の妹、妹に実母の記憶はない。

母親が亡くなって一年父親は再婚し、義母がやってきたらしい。

だが、育児はせず彼女と妹は家政婦の斎藤さんにより育てられたそうだ…



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