【B】星のない夜 ~戻らない恋~
検査の結果は、進行性の転移。
血液やリンパを通して、肺へと転移してしまい、
肺から胃へ進行している状態だった。
春に開業以来、粒子線治療を通して沢山の人に希望を与えてくれた医療センター。
その最後の砦ですら、希望をくれなかった再発。
粒子線は、特定された留められた部分にある癌を撃つ治療。
だけど……進行性の癌は、留められた部位を特定して一つ一つ癌を
撃つことも出来ないし、胃の粘膜に放射線を照射すると潰瘍が出来やすくなるとかで
専門分野の先生ですら、今回は首を横にふることしか出来なかった。
「心【しずか】、大丈夫……。
私、また怜皇さんに頼んでみるから。
私よりも先に、睦樹さんも頼んでくれるでしょ。
ちゃんと……見つかるはずだから」
自分に言い聞かせるように、説得するように心【しずか】に声をかけるものの
心【しずか】はただ黙って首を振った。
そんな首を振った心【しずか】を視界にとどめながら、
ふらっと体がよろめいて、そのまま私は倒れ込んでしまった。
「咲空良」
私の名前を呼びながら、倒れた体を抱きとめたのは
何時の間にか姿を見せていた怜皇さん。
フィアンセなのに、どれくらいぶりだろう。
この声を聴いたのは……。
「少し休め。
すいません、部屋をお借りします」
そのまま浮遊感があって、私は俗にいうお姫様抱っこで
その場を後にする。
怜皇さんに抱かれたまま
顔を出したその場所は外来の診察室。
受付の看護師に何かを話すと、
中から姿を見せたお医者様に親しげに話した後
私は中の部屋に通された。
そのまま点滴を二時間ほど受ける。
バカみたい……。
心【しずか】を支えに来てるのに、私が倒れて崩れてしまったら
意味がないじゃない。