【B】星のない夜 ~戻らない恋~
40.自業自得 - 咲空良 -
夜中にかかってきた突然の電話。
花楓【かえで】さんに呼び出されて向かう電話口。
ネグリジェに身を包んだまま、ゆっくりと受話器を取る。
「もしもし、お電話変わりました。
咲空良です」
そう言って受話器に向かって声を出すものの
電話の向こうの人は、すぐに話してくれない。
「もしもし、お父さんなんでしょ。
どうかしたの?」
更に声を続けた後、一呼吸おいて声が聞こえた。
「明日、10時。
家に戻ってきなさい」
用件だけ告げて一方的に切られた電話。
切られた電話に受話器を握りしめたまま
じっと見つめてしまう。
「咲空良さま、いかがなさいました?」
詮索するように問いかけられた花楓【かえで】さんの言葉に
現実に戻った私は、受話器を置いてゆっくりと笑いかけた。
「明日、10時に実家に戻ってきて欲しいと電話がかかってきました。
間に合うようにハイヤーを手配していただけますか?」
「かしこまりました」
「お願いします。
お休みなさい」
そう言ってお父さんの呼び出しを
疑問に思いながら自分の寝室へと戻った。
怜皇さんもまた、今月に入ってから仕事が忙しくて
邸に帰ってこれない時間が続いてる。
アメリカ出張、香港出張、北海道に九州。
カレンダーにはぎっしりと、
怜皇さんのハードの仕事内容が記入されている。
体壊さないでほしいな……。
彼がくれた大切な携帯を握りしめながら、
私は心の中で祈る。
彼を思って彼の為に何かをやりたい。
そう思うだけで、
心の中が穏やかに清められていく。
幸せだと感じることが出来る。
それもまた……本当の恋を、
怜皇さんが私に教えてくれたからなのだと感じられた。
ベッドに入って目を閉じるだけで、
彼が長期出張前に私に触れてくれた感触が優しく体を包み込む。
彼が辿った指先を思いだしながら、自らの手で触れるだけで
彼を求めるように私の体は反応してしまう。