【B】星のない夜 ~戻らない恋~
その場所が、瑠璃垣の会長の邸だと知ったのは数分後。
咲空良としてのお披露目と、親族へと懐妊の報告。
後継者誕生を待ち望む声にほっとする。
その後は、挙式会場や披露宴会場に出向いてプランニング。
お腹にも優しい感じのマタニティーのウェディグドレス。
オートクチュールで作られる
その日の為のドレス作りに奔走する。
途中、疲れた時は休憩を取りながら。
着々と進んでいく結婚式の準備を進める
私の隣、怜皇様は当たり障りのない距離で付き添う。
だけど……ぎこちなくなっているように
感じるのは、怜皇さまの心に本当の咲空良が残っているから?
咲空良を名乗って生き始めた私なのに、
今も咲空良に怜皇さまを奪われそうで苦しくなる。
もう解き放たれると思っていたのに、
この苦痛は何時まで続くの?
入籍するまで?
結婚したら……私は咲空良に勝てるの?
悶々とする時間を一人抱えながら、
準備を進めた結婚式。
招待状の発送。
披露宴のBGMのチョイス。
ヘアメイクの打合せ。
瞬く間に、時間は過ぎて挙式当日の朝、
私は一人瑠璃垣の家から出掛ける。
花嫁の朝は早い。
怜皇さまもまた、慌ただしく過ごしているみたいで
すれ違いばかりが続いていた。
お色直しを含めて披露宴で着替えるのは三回。
真っ白なウェディングドレス。
十二単。
そしてカラードレスが二回。
妊娠中の為、
誰もが私の体を気遣ってくれる。
そして祝福してくれる。
咲空良もまた、葵桜秋として咲空良の妹として、
式には出席しているもののその視線は、
私を見ようとはしていない。