【B】星のない夜 ~戻らない恋~
「今回の怜皇の一件も……父さんには何も出来なかった。
だがな……父さんは今も、あれの目を盗んでここに来ている。
この場所は父さんとお前の隠れ家だ。
そして本当の家族になれる場所でもある。
最近のおまえを見ていると、どうも……父さんも昔を思い出してな。
お前が息を抜く為なら、母さんも手伝ってくれるだろ。
邸に居る、咲空良さんが心配なら、その点は父さんが動くことも出来るだろう。
そんな形でしか……俺が出来ることはないからな」
父に寄って告げられた縛られない家族の形。
その形は……睦樹たち過ごしたあの時間をリンクさせる。
今はまだ目に見えなくても……
何時か、俺の手に家族が出来る日が来るかも知れない。
そんな風に思えた。
久しぶりに、父さんと会話が出来た穏やかな時間だった。