【B】星のない夜 ~戻らない恋~



タクシーの運転手さんにお礼を伝えて、
お医者様の後をスリッパに履き替えてついていく。



誘導されるままに診察室でお医者様の質問に答えていく。



尿検査をするからと手渡された紙コップ。



お手洗いの場所をきいて所定の位置へと紙コップを置く。


小窓が開いて検査を始めたみたいで私は診察室の待合室に腰掛けた。




「都城葵桜秋さん。
 中へどうぞ」




そう言われて、もう一度入った診察室。


お医者様の前に座って次は血液検査。


血液を採った後は、奥の部屋へとお医者様は行ってしまって
また待ちぼうけ。


暫くして、検査結果らしいシートを手にして
戻ってくると自分の椅子へと腰を掛けた。



「おめでたじゃな。

 少しお前さんが貧血気味なのか気になるな」



そう言って先生は検査結果の綴られているらしい
シートを私に手渡した。



おめでた?
妊娠してるの? 



ボーっとした私は何時の間にか、
瞳から涙を溢れさせていた。




「どうした?」



おじいちゃん先生は年の功なのか、
気遣うように言葉を選んで見守ってくれる。


余計な詮索をするようなことはしない。


ただ……黙って見守ってくれているだけなのに、
その空気がとても暖かく思えた。


「落ち着いたら産婦人科へ行っておいで」 



最後にそう締めくくって病院から送り出してくれた。




優しく送り出された個人病院からトボトボと夜の街を彷徨うように歩く。



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