【B】星のない夜 ~戻らない恋~
「睦樹……良く知らせてくれた。
彼女の子供も俺の子供だ。
認知をして……何とか育てられるように立ち回る」
何とか紡げた言葉に、睦樹は黙って首を振った。
「今、俺は都城葵桜秋として存在している咲空良ちゃんを
廣瀬の家に招き入れた。
妊娠がわかった咲空良ちゃんを都城の家で生活させるのも
心配だったから。
心【しずか】なら、わかってるくれると思うんだ。
だからお腹の子のことも、咲空良ちゃんのことも怜皇は何も心配しないでいい。
それに俺が父親として存在することで、
お前も俺を通して、我が子と繋がることが出来るだろう。
お父さんと呼ばせることは出来なくても、おじさんくらいには認知されるだろ」
続けて告げられた睦樹の言葉にも、俺は正直自分の感情がついていかない。
「結婚式をあげるとかは一切しないよ。
廣瀬の会長も事情を察してくれて理解して貰った。
紀天にも母親代わりの存在は必要なのも確かで、
アイツは心【しずか】が言ってた咲空良ちゃんの希望だから。
ただ……お前には、咲空良ちゃんの身に起ってることもきっちりと
伝えておきたいって思ったんだ」
睦樹らしいと言えば睦樹らしい。
昔からアイツを甘やかすだけじゃない、寄り添うだけじゃない。
向き合うべき現実は何時だって直球勝負で告げてきた。
だからこそ、俺はアイツを信頼している。
「……わかった……。
睦樹、何か俺に出来ることがあったら何時でも連絡してくれ」
「あぁ」
その後は、楽しく気分転換になるはずの時間も何処か空気が重たいまま
お酒を終えて俺は、いつものアイツの書斎へと足を向けた。
手渡されたのは睦樹の手土産でもある、
咲空良の手料理と、俺の生活を心配した母の手料理。
自宅に帰って、それぞれの手料理に少しずつ箸をつける。
そのまま崩れ落ちるように床へと座り込んだ。