【B】星のない夜 ~戻らない恋~

10.迎えられた家族-咲空良-




目が覚めた時、
私は自分が何処にいるのかわからなかった。


お医者さまや看護師さん達に囲まれて、
今の状況を教えて貰った。



私は葵桜秋に階段から突き落とされて、
救急車でこの病院へと運び込まれてきたみたいだった。



暫くして、ガウンに身を包んだ
両親と睦樹さんが顔を出す。



「葵桜秋、葵桜秋。
 気分はどう?」



声を出そうとしても、思うように声が出せなかった。


目が覚めてから数日後、私は体につけられた管を外されて
一般病棟と呼ばれる個室へと移動することが出来た。



一般病棟に戻った最初の日、
ウトウトと眠ってしまっていた私の前に姿を見せていたのは
心配そうな表情で私を見つめる怜皇さん。



「痛むか?」


えっ?

ボーっとしていた意識が覚醒していくにつれて、
痛みが増してくる気がする。


「睦樹は今、病院内の託児所に紀天の様子を見に行ってる。
 すぐに帰ってくるよ」


その声に、小さく頷いた途端……突然体に走った痛みに顔を歪める。



「看護師か主治医を呼ぼう。
 痛いんだろう」

ただ頷いた私に怜皇さんは枕元のブザーを鳴らした。



どうして彼がいるの?



そう思う戸惑いと、あの朝の記憶が体の中に蘇る。



あの朝、眠っていた私は突然首を絞められた。

苦しくて目が覚めると、そこには鬼のような形相の葵桜秋が居た。

殺される恐怖に怯えて、必死の思いで逃げ落としたのに……
階段から葵桜秋に寄って突き落とされた。




あの子は本気で私を殺そうとしていたの。



そう思った途端、けいれんを始めたかのように
体がガダカタと震え始める。

痛みと震え続ける体に一気に委縮していく筋肉に
ただ耐えしのぐだけの時間。



白衣の人たちが慌てて、駆け込んできて、
部屋の中の人を外に追いだす。


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