【B】星のない夜 ~戻らない恋~

14.満たされない想い -葵桜秋-



一ヶ月検診。
細菌性髄膜炎の後遺症により伊吹は聴力障害が見つかった。


今は聴力のみ確認されているが、
その後も成長と共に、どんな後遺症が明らかになるかはまだわからないと
伊吹の主治医は残酷にも告げる。


怜皇さまと二人、診察室の椅子に座って
我が子の現状を聞きとめる。



「まだまだ、運動障害・知能障害・てんかんと言う風に、
 成長と同時に確定する後遺症もあります。

 ですが、熱も下がり伊吹君は確実に成長しています」


「有難うございます。
 伊吹を宜しくお願いします」


そう言って椅子から立ち上がろうとする私を
主治医は言葉を続けて呼び止める。



「次に、弟の志穏君ですね。
 志穏君も経過は順調ですね。

 体重の方も1100gを越えまして、
 毎日大きく成長されています」





そう言って言葉を続ける医者。




次男?

志穏?

双子ですって?




私の子供は、紛れもなく伊吹一人。




だけどこの場には、志穏と言うもう一人の子供が存在する。



もう一人の子供と言われて、私の中で結び付くのは
姉、咲空良の子供。





突然の名前に、私の心は波立つ。






「それでは、看護師がNICEまでご案内します。
 伊吹君と志穏君に逢って来てあげてください」



そう言って主治医は、戸惑い続ける私に言葉を投げた。



「瑠璃垣様、ご案内します」



看護師に連れられるまま、NICEへと足を運ぶ。


第一病院のNICEと違って、
第二病院のNICEは今回が行くのは初めてだった。




「瑠璃垣さま、いらっしゃいました」



入り口で看護師が声をかけると、
その部屋にいた医療関係者が一斉にこちらに視線を向けて一礼をする。



「お待ちしておりました。
 どうぞ、こちらで消毒をしてガウンを身につけてから中へお進みください」


指示されるままにブルーのガウンを身につけて、消毒とマスクを終えて
その部屋の中へと一歩踏み入れた。



部屋の中に更に、個室が用意されてその部屋では、
二人の赤ん坊だけが隣り合って保育器に入ったまま眠っていた。



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