【B】星のない夜 ~戻らない恋~
第一夜 「双子の恋」

1.春、運命の輪がまわる時 -咲空良-


春。 

女子校らしく、雛祭りの日に、高校・大学との一斉卒業式を迎えた
聖フローシア学院。


私、都城咲空良【みやしろ さくら】と一卵性双生児の妹、都城葵桜秋【みやしろ きせき】は
雪が時折、過ぎゆく冬を惜しむように舞い踊る中、二人で最後の校舎を歩いていた。



「おめでとう。咲空良」
「えぇ、葵桜秋もおめでとう」



二人、今日もお揃いの振袖に袴を身につけて、
同じ髪型に同じ髪飾り。

同じようなメイクをして、瓜二つの姉妹がゆっくりと肩を並べて歩いていく。



今日、幼い時から通いなれたこの学院を巣立って
明日からは、それぞれの道を歩いていく。


葵桜秋は瑠璃垣財閥が経営する大手企業に就職の内定が決まり、
私もまた、夢だったエステ業界で働くことが決まってた。


もう……こんな風に、いつも一緒に過ごし続けることは
難しくなるのかな?


隣を歩く葵桜秋の姿をチラリと覗きながら
そんなことを考える。


生まれた時からずっと一緒。


何をするのもずっと一緒で、一卵性の特性なのか、
何もかもが同じ仕草の私と葵桜秋は時折、入れ替わって冒険するのが楽しみだった。



葵桜秋の世界。
私の世界。


何もかもが同じように見えて、隣を歩くその存在の世界は
何もかもが違って見えた。





「咲空良さま、葵桜秋さま。
 
 今から卒業パーティをしようかと思うんだけど、
 ご一緒にいかが?」



同期生すらも、どちらがどちらか見分けることが出来ないのか
いつも二人の名前をセットで告げる。


だから、振り返るのもいつも同じだった。



「まぁ、卒業パーティ?
 楽しそうね。
 葵桜秋、あなたはどうする?」



隣の葵桜秋は、すぐに笑みを返して


「参加するわ。咲空良。だって……卒業記念日だもの」


そう告げた。


「なら、私もお邪魔するわ。
 家に連絡をいれなくては……」



そう言って携帯を取り出した時には、
もう葵桜秋の姿は友達の輪の中に入り込んでいた。



同じ顔、同じ体格。
同じメイクに、同じ服装、髪型。


外見はどう見えても区別がつかないほど
そっくりなのに、ただ一つだけ違う場所。


それがメンタル的な部分。
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