【B】星のない夜 ~戻らない恋~
16.繋がらない電話 -咲空良-
四ヶ月が過ぎて、
突然我が家にポストに届いた一通の葉書。
差し出し人は、瑠璃垣怜皇。
表に記載された宛名は、廣瀬睦樹・葵桜秋様。
その裏面には二人の赤ちゃんが仲良く笑みを浮かべていた。
写真に記された名前は瑠璃垣伊吹・瑠璃垣志穏。
そして葉書の隅の方に『すまない』と記されていた。
その葉書に映って笑っているのが、
ずっと探し続けていた尊夜なのだろう。
離れていても私にはわかる。
その葉書を手にしながら私は涙を流す。
今も生きていることがわかってほっとした私と、
もう二度と手が届くことのないところへ奪われてしまった悲しみが押し寄せる。
そんな不安も紀天がギュっと手を掴んで必死にヨシヨシと慰めてくれる。
睦樹さんが仕事を終わった後、葉書を見せると
彼はすぐに怜皇さんの携帯へと連絡をいれる。
だが電話は繋がらない。
そう……そうよ。
電話をすれば良かったのよ。
そう思った後は瑠璃垣の邸に電話をすると知可子さんによって、
『奥様はお部屋でお休みになられています』と捕まえることは出来なかった。
次に連絡をいれるのは、怜皇さんがプレゼントしてくれた咲空良の携帯電話。
あれを呼び出せば葵桜秋に繋がるはず。
そう思って何度も何度もコールを続ける。
しつこくコールを続ける私に、葵桜秋も苛立ったのかついには
『電源が入っていないか電波が届かないところにいるためかかりません』っと
留守電コールが流れるようになってしまった。
それでももう一度電話をかけようとする私に、
睦樹さんはそっと抱きしめて私の手から握りしめいた携帯電話をゆっくりと放した。
「咲空良ちゃん、俺が怜皇を捕まえて問いただすよ。
だから咲空良ちゃんは、もう泣かないで。
尊夜が無事でいることはわかったじゃないか……。
だったら……後は、俺たちの子供を取り戻すだけだよ」
「パパ……ママ……ぼく、とうやのおにいちゃん」
紀天が呟いた言葉にまた涙が溢れだした。
その次の日から、私は精神的に追い詰められ過ぎたのか
声が出なくなってしまった。
週末、ようやく睦樹さんによって連絡が取れた怜皇さん。
「咲空良ちゃん、話し合いに行ってくるよ。
紀天、ママを頼んだぞ」
そう言って睦樹さんは出掛けて行く。
尊夜が生まれて、紀天がお兄ちゃんになると言い出したその時から、
紀天が私を呼ぶのは、お姉ちゃんではなくなった。
……ママ……。
私のことをそうやって呼んでくれる紀天を
抱きしめずにはいられない。
「ママ、あそぼ」
そう言いながら私の隣で、落書き帳にお絵かきをしたり
ブロックを積んで遊んだり。
そんな紀天と一緒に遊びながら、
私は睦樹さんの帰りを待ち続けた。
睦樹さんが帰宅をしたのは22時近く。