【B】星のない夜 ~戻らない恋~
『ちゃんと繋がってたんだよ。
俺たちの上には、星がなかった夜。
だけど……子供たちは、真実を受け入れて新しい真実の中で
力強く動き出してる。
葵桜秋、こっちも読むといいよ。
こっちは……志穏から、兄・伊吹にあてた手紙。
この手紙の存在を、伊吹が亡くなった日、志穏によって教えられたんだ。
それで俺は決めた。
伊吹と志穏の二人の願いが、この中に託されているものだったら、
俺は二人の意志を尊重して、伊吹を志穏として天国に送りだそう。
そう思って、睦樹と咲空良さんにも許しを貰った』
そう言って手渡されたのは、瑠璃垣志穏様と書かれた宛名に差出人は瑠璃垣伊吹。
封筒の中の手紙を抜き出して、ゆっくりと開く。
*
志穏兄さんへ
体の調子はどうですか?
兄さんがオレに謝ることなんて何処にもないよ。
葵桜秋さんの……兄さんのお母さんが書いた日記を
二人でこっそりと読んだ日から、
オレは……兄さんの母さんがオレにきつく当たる理由がわかった。
だけど……そんなこと気にする必要なんてないのに。
オレは、ずっと決めてる。
瑠璃垣伊吹の名前は、この一族を背負う名前はずっと兄さんのものだよ。
今は俺がその名前を借りているけど、だけど……兄さんのものだよ。
兄さんが支えてくれているから、兄さんと一緒に居られるから
オレは、父さんやお祖父ちゃんたちが認められる後継者として存在出来てると思うんだ。
だから伊吹の名前も、二人のものだよ。
今日、オレのデューティーが教えてくれたんだ。
デューティーって言うか、もう一人の兄貴みたいな存在。
紀天って言う名前なんだけどさ、廣瀬って家で育ってたら
オレ、尊夜って呼ばれてたみたい。
だから二人の時は、オレは尊夜で兄ちゃんは志穏。
んで伊吹の名前は、二人で継げばいんじゃない?
表向きは全部、尊夜のオレがやって、裏のドンは兄ちゃんだからな。
だったら……ずっと二人で協力し合えるだろ。
伊吹の名前は、二人共通の名前だよ。
二人だけの約束、忘れんなよ。兄ちゃん。
尊夜
*
二人がそっと交わして約束してた秘密の手紙。
その手紙を読み終えて私は壁にかかった
大切な我が子の姿を見つめる。