【B】星のない夜 ~戻らない恋~
その言葉に、俺は思わず心の中に怒りが湧き上がる。
その怒りが目の鋭せとなって表に出てしまったようで、
彼女は再び怯えた眼差しで俺を見る。
差し出した手を、怯えるように重ねて着た途端
何故か、彼女の体を俺の方に引き寄せていた。
引き寄せた途端にベッドの上で倒れ込むようになった途端、
彼女の委縮している体に、服越しを手を這わせていく。
彼女が昔のことを覚えていないなら、
あの出逢った日のことを覚えていないなら寄り添う必要はない。
瑠璃垣の闇にのまれて、壊れるくらいなら
今ここで彼女を追い詰めて、一族から去って貰う。
それでいいんじゃないか?
俺は瑠璃垣の闇に巻き込みたくない。
養母は彼女を追いだしたい。
祖父の想いに答えることは出来ないけど、
一度は寄り添おうと、かけをしたんだ……。
俺が這わせる手に、翻弄されそうになっているのか
必死に漏れる声を我慢する彼女は、
次の瞬間、物凄い力で俺を両手で突き飛ばした。
そのままベッドから逃げ出して彼女側の部屋に続く片隅で、
小さく体を震わせながら黙って睨み続ける。
体に痛みを感じながら、床から体を起こして、小さく溜め息をつく。
「まぁいい。
早くこの家になれなさい。
俺の隣で一日も早く立てるように」
自分でも、どうして……この言葉になったのか、
その理由すらわからないまま、俺は自室へと続くドアを開いた。
ソファーに体を預けながら胸の痛みを覚える。
これで……どの意味にも、感じて貰える行動になったのだと
言い聞かせるように、自らを落ち着かせる。
居場所のない時間は、何時まで続くのだろう。
これで、また暫く……家には戻ることが出来ないだろう。
そんな風に感じた苦い時間だった。