【B】星のない夜 ~戻らない恋~
初孫は私。
「……私の……?」
思考回路が停止したように
何も考えられないまま固まり続ける私に
更に父の言葉が追い打ちをかけた。
「咲空良、瑠璃垣家は近いうちに君を瑠璃垣の家に迎え入れたいと
言ってきた。
だから……咲空良は、瑠璃垣の坊ちゃんが望まれるようにしなさい」
ばっさりと告げられたその言葉は、
私の春からの新しい未来が摘まれたと言うことを意味していた。
瑠璃垣に就職する葵桜秋ではなく、
どうして私なの?
縋るように顔を上げて見つけた先、
葵桜秋は唇を震わせながら私を睨みつけていた。
そんな視線に耐えられなくて、
私はそのまま、自分のベッドへと駆け込んで
布団の中へと潜り込んだ。
視界を滲ませる涙だけが
留まることなくあふれ続ける
夢も希望も失った春。
運命の輪は、
私の想像を遙かに超えて時を刻み始めていた。