【B】星のない夜 ~戻らない恋~
同じプロジェクトなら
傍に居れることが多くなる。
次の瞬間、ガラスルームのブラインドが一気に閉じられて、
光が遮られた部屋で怜皇様の足音が近づいてくる。
そしてそのまま、接近した怜皇様の息が
私の感覚をくずぐっていく。
耳の中に吹き入れられる息に
思わず脱力する体。
脱力しかけた体を瞬時に受け止めながら、
もう片方の指先で、耳たぶを辿り何度も刺激される。
感覚の波に翻弄されて、
零れ出る声に自分自身がびっくりと、
必死に声を出さないように耐える私。
此処は職場。
ガラスの向こうには今も働く同僚たちが居る。
ガラスは防音効果なんてないんだから
今、ここで声を漏らすなんて出来ない……。
そんな私の心を知ってか知らずか、
何度も何度も、私の弱いところを刺激していく怜皇さま。
まだ触れられることのない蕾の奥から
ゆっくりと溢れだす蜜を感じながら
必死に声を殺し続けた。
僅かな時間なのに職場で抱き合う刺激は、
またホテルで抱き合う時とは違って
イケナイことをしているみたいで。
怜皇さまの悪戯がようやく終わって、
指先が私の体から離れると乱れた服装を整えながら、
呼吸を整える。
「君の力に期待している」
すでに悪戯を終えて通常モードに戻った怜皇さまが業務的に告げる。
「あの……」
刺激されて火照りすぎた体は悶々としすぎて、
すぐに仕事に戻れるような状況でもなく恥じらうように告げる。
「……抱いてください……」
そう告げた私に怜皇さまは、
良く出来ましたとでも言わんばかりに
笑みを浮かべてブラインドを開いた。
一気に眩しくなったガラスの部屋。
「近衛、出かける支度を。
東堂、夕方のレセプションまでには戻る。
東堂は、夜の経営会議の資料を」
ガラスの部屋を出た途端、控えていた秘書さんに告げると、
怜皇さまを私を連れて職場を後にした。
プロジェクトの為の出張扱いで会社を二人で出た私は
用事を済ませた後、あの一度泊まったホテルのあの場所で
レセプションの時間に間に合うように花を咲かされた。
昼はビシネスパ-トナー。
夜は……。
どれだけ短くてもいい。
私だけのアナタをもっともっと感じさせて。
私の中の何かが壊れ始める音に
気が付くことも出来ずに私は自分の快楽を求めることに必死だった。