泣いていたのは、僕だった。~零~
「次はなにする?」
「隆、そろそろ帰んねーとまた親父さんに怒られるんじゃね?」
その日俺はいつものように、近所のダチと遊んでいた。
啓太、涼、健、浩輔、昴の五人は俺にとって大切な仲間だった。
こいつら以上の仲間はいねーって思えるぐらい。
「いいんだよ。あいつ過保護すぎんだって。」
「大切にされてる証拠だよ。ちょっと羨ましいぐらい…」
「昴………」
中でも昴は特別だった。
昴の家庭事情があまり上手くいっていないことを俺は知っている。
「俺さ、五代目とか継ぐ気ねぇけど……もし万が一継ぐことになったら、お前のこと若頭にしてやるよ。俺の側近だ。」
「えー、僕嫌だよ。極道なんて。まぁ、でも隆の下なら悪くないかな。」
「だろ?俺がおめーを守ってやるよ。」
「そういう場合逆だろ?組長を守るのが側近の役目だ。」
「守られる組長なんてごめんだ。俺は皆を守る組長がいい。ま、継がねえけど。」
勿体ないな、と昴は一笑。
「こんなに組長気質なのに。」
「嬉しくねぇよ。」
昴は特別だ。
絶対に失いたくない。