泣いていたのは、僕だった。~零~
「昴、隆!なにしてんだよ?」
「何でもねぇよ。」
「ほら、遊ぼうぜ。」
次になにをするかと談笑している最中、複数の男達が俺達に近付いてきた。
「おい、ガキ共ちょっと面貸しな。」
「は?何だよ、おまえら?」
前に出たのは啓太だ。
俺たちの中で啓太は喧嘩っ早い性格をしていた。
「チッ……ガキは黙って言うこと聞けばいいんだよ!」
刹那、時間が止まったようだった。
啓太の体が地面に吸い込まれていく。
男が放った拳が啓太の頭にヒットした。
男の体格から見て、あんなの食らったら最悪死んでしまう。
どんなに粋がっても俺たちは中学生。
体が発達途中なのだ。
啓太は突っ伏したまま動かなくなった。
「啓太……?啓太!?」
駆け寄ろうとした俺の腕を男が掴む。
「てめぇが櫻井組の跡取りだな?」
こいつら俺が目的で………
「だったら何だよ!?」
「一緒に来てもらうぜ。おい、他のガキ共片付けろ。」
「な…………」
男の言葉を合図に、仲間の悲鳴が響き渡った。
涼の腕が変な方向に曲がっている。
健は足が………。
浩輔なんて気絶してやがる。
昴は――
「――昴!!」
名前を呼ぶと目があった。
「守れなくて、ごめん。」
昴は言った。
泣きそうな顔で。
俺に謝罪した。
直後、昴の胸にナイフが突き立てられ、口からおびただしい量の赤い液体が流れた。
伸ばした俺の手は、届かなかった。
何にも、届かなかった。
「ちくしょう……っ!離せよ!!」
腕を掴む男の手を振り解こうとするも、力負けしてしまう。
「ガキってのは、どうしてこううるさいのかね。行くぞ、てめぇら」
ドスッと後頭部に痛みを覚え、俺は意識を失った。