泣いていたのは、僕だった。~零~
次の日の夜。
「よっ!昨日ぶり!!」
満面の笑顔を浮かべて青年が家に訪ねてきた。
「…………何しに来たの?と言うかどこで住所知ったわけ?」
「皆保のおじさんに聞いたんだ。へぇ、案外いいとこ住んでんだな。」
許可なしに青年は中へと入っていく。
「不法侵入で訴えようか?」
「それは困る。俺、須田 千明ってんだ。」
「……名前なんて聞いてないよ。」
なんか何言っても話通じない気がしてきた。
「なぁ、俺もここ住んでいい?」
「……どうしてそうなるのかな?」
「ここ気に入ったから。」
まるで子供だ。
呆れて物も言えない。
「…………昨日、どうして止めた?」
「?」
「殺した方が楽だったのに。」
「ああ。だって相手、戦意喪失してたろ?無駄な殺しはしたくないだけだ。」
甘いな。
「そんな甘い考えじゃ、いつか足元掬われるよ。」
「あはは、かもなー。」
瞬間、千明が僕を見た。
その眼差しはどこを見ていたのか。
暗い暗い闇夜を見る眼差しだった。
「俺とお前、似てる気がしたんだ。」
「……………」
「俺さ、昔親を殺したんだ。」
胸を鷲掴みにされた気がした。
「へぇ」
「あれ?深く聞かねーの?」
「聞いても仕方ないでしょ。」
「そりゃそうだ。」
から笑いした彼が、ひどく親しく感じた。
「ねぇ、僕ら二人はずっと独りぼっちだね。」
「……そうだな。」
今度はしっかり僕を見て、千明は笑った。
「なぁ、一緒に組まないか?いいコンビになると思うぜ。」
不思議と悪くないと思った。
「うん、いいよ。」
「じゃ、改めてよろしくな!」
「でも足手まといなら殺すから。」
「おう。やってみろよ。」
これが須田千明との出会いだった。
残酷な別れが待つとも知らず、僕達は出会ってしまった。