泣いていたのは、僕だった。~零~
アパートの一室で、パソコンのキーを打つ。
「創、少し休憩したら?」
そう言ってコーヒー入りのマグカップを差し出してきたのは、花宮 優樹菜(ハナミヤ ユキナ)。
僕の大切な人。
「ありがとう。」
「今回はどんな話を書いてるの?」
「主人公が幸せとは何か、を探す旅をする話だよ。」
「へぇ。完成したら読ませてね。」
二つ返事で頷く。
僕は作家の仕事をしている。
決して売れているわけではないけど、食べていくには充分だった。
「ねぇ、創にとっての幸せって何?」
「前にも同じ質問された気がする。」
「あの時は答えられなかったでしょ?」
「そうだった。僕の幸せは………優樹菜と同じだよ。」
そう言うと優樹菜は笑った。