泣いていたのは、僕だった。~零~
「私と創、子供…そうね、二人がいいわ。四人で静かに暮らせたら、私は幸せよ。」
「そうだね。僕も幸せだ。」
決して多くを望んだわけじゃない。
当たり前の幸せを願った。
「そういえば優樹菜、前に言ってた会社の件は大丈夫そうかい?」
「うーん…今の所はね。でも子山部長がどうも怪しいのよね。」
優樹菜が勤める会社の内部で、最近不審な動きがあったのだと彼女が一週間ほど前から悩んでいた。
「もしかしたら会社のお金を横領してるのかも。もうちょっと調べてみるつもりよ。」
「あまり首を突っ込まない方がいいんじゃないかい?」
「大丈夫よ。調べるだけだから。」
もっと強く止めるべきだった。
この時すでに彼女は危険に晒されていたんだ。
それから一週間。
その日は満月だった。
二十時……
いつもならとっくに帰ってきているのに……。
会社に電話を掛けても、彼女は二時間前に会社を出たと言われた。
何か……あったんだろうか?
辺りを探そうと僕はジャケットを羽織り、外へ飛び出した。