泣いていたのは、僕だった。~零~
コンビニでパンと消毒液、湿布などを買い揃えた。
帰宅すると翔一は目覚めていて、辺りを警戒している様子だった。
「おはよう。気分はどう?」
「最悪だな。お前の顔見た瞬間に。」
「あははは、ヒドいなぁ。」
僕がベッドに近付くと、彼は目に見えて怯えた。
「な、何だよ?」
「服、脱いで」
「は?」
「手当するから、服脱いで」
彼の着衣に手をかけると、思いっきり振り払われた。
「触るな!」
強い拒絶だった。
何も寄せ付けない怒りを秘めた眼差し。
「………分かった。じゃあこれ」
僕は買ったパンをベッドの上に置いた。
「お腹空いてるでしょ。」
「いらない。」
「好きにしなよ。どのみち僕は食べないから。」
僕は彼に背を向け、部屋の入り口に立つ。
「向こうの部屋にいるから、用があったら呼んでね。」
「……なんで、そこまでするんだよ。」
「昨日言ったでしょ?君は僕の所有物だからだよ。それ以外に理由なんてない。」
そう告げて、僕は部屋を出た。
三時間経っても、四時間経っても彼から呼ばれることはなかった。
ま、当然か。
外はすっかり日が暮れて、僕は吸っていた煙草を消した。
そろそろ、か。
僕は翔一がいる部屋のドアを静かに開けた。
翔一が眠っているのを確認して、中に入る。
寝てる間に手当てしちゃわないとね。
部屋のゴミ箱を見ると、封の開けられていないパンが捨ててあった。
やっぱり食べてないか……。
これじゃ体力も回復しないのにね。