泣いていたのは、僕だった。~零~
ベッドに乗り上げて、翔一の顔を覗き見る。
無防備だな。
さっきまであんなに警戒心剥き出しだったのに。
早く済ませてしまおう。
翔一の着衣に手をかけた瞬間、
翔一の目が見開かれた。
「あ、起きちゃった?」
「や、だ………」
「え…」
「やだ、嫌だ!もう止めてくれぇぇぇぇ!!」
ベッドの上でいきなり暴れ始める。
さすがにビックリだな。
声をかけても嫌だ、嫌だ、と叫ぶばかり。
「やめてくれ、やめて……もう嫌だ………っ!」
奥歯を鳴らして、ガタガタと身を震わせ、両腕で自分を守るように翔一は抱き締めていた。
よっぽどひどい扱いを受けてきたんだろうな。
僕は翔一の腕を取る。
すごい力で振り払おうとしてくるけど、構わず体を引き寄せた。
腕の中で暴れ回る翔一をそれ以上の力で抱き締める。
「い、やだ………や」
「誰も傷つけたりしない。」
子供を宥めるように頭を撫でた。
「大丈夫。もう大丈夫だから。」
「い、やなんだ……」
「うん。」
「もう……嫌だ」
「大丈夫だよ。」
途端翔一は僕に縋りつくように泣いた。
声を出して泣いた。
僕は黙って聞いていた。