泣いていたのは、僕だった。~零~
泣き疲れた翔一はそのまま眠ってしまった。
僕は手早く包帯を取り替えて、ベッドに寝かせる。
「……檻から逃げ出してきたのかな。この野良は」
寝息を立てて気持ちよさそうに眠る横顔を撫でた。
「また明日ね。」
僕は部屋を出た。
煙草を吸おうとして口の端が切れていることに気がついた。
多分翔一の拳が当たったんだろう。
「すごい力」
拭った血を見て一笑。
僕は煙草をしまい、息を吐き出した。