泣いていたのは、僕だった。~零~
弁当コーナーの前で僕は立ち止まる。
何がいいのかな。
僕には味の違いがわからないからな……。
僕は何を食べても同じに感じてしまう。
まるでゴムを食べているような感じ。
いつからだっけ?
ああ、そうだ。
あの日からだ。
大切な人をなくした、あの日から。
美味しいと感じる心さえ、僕は残してきてしまった。
さて、困ったな。
何を買っていけばいいのか…。
「すみません。この中で、何が一番美味しいですか?」
商品整理をしていた店員に訊くと、店員は愛想のいい笑顔を向けて一つの弁当を差し出してきた。
「このオムライスが一番人気です。」
「へぇ。」
僕はそれを受け取った。
他にも色々買ってみた。
普段買わないようなものばかり。
それをこさえて僕は帰宅した。