泣いていたのは、僕だった。~零~
古林真司という男は、一言で言えば謎だ。
人をバカにしたような態度、
かと思えば、途端に全てに絶望したような冷めた目つきをする。
あの目、俺は怖いと思った。
何もかもを拒絶するような目だった。
そう、何もかもを。
路地裏で会った時とは、まるで別人だよな。
色々考えてたら真司が戻ってきた。
「ただいま」
「おかえりーって…なんだよ、その量」
袋一杯に詰められた食料を見て、俺はげんなりした。
「見てたら買っちゃった。これなんて新商品だよ。」
最近まで、この男には食に対する欲がなかったらしい。
何を食べてもゴムにしか感じられなかったと言っていた。
それがなぜか急に味を感じるようになり、今では手当たり次第に口にしている。
それでも太らないコイツが不思議だ。
「そんなに二人じゃ食いきれないって。」
「そうなんだけど、ついね。あははは」
「あははは、じゃない!少しは反省しろっての」
「まぁまぁ。ほら、これなんて美味しそうだよ。」
「ったく……仕方ねーな。勿体ないから食ってやるよ。」
こんな馬鹿げたやり取りが、実は少し楽しく感じていた。
でもこれは絶対、真司には教えない秘密だ。