泣いていたのは、僕だった。~零~
その日は雨が降っていて、僕は買い物からの帰りの道を急いでいた。
ふと足を止めた路地裏で、チンピラの集団を見つけた。
見れば屈強な男達が一人の青年を取り囲んでいる。
可哀想に……。
カツアゲか何かかな?
「さっさと金寄越せよ、ああ゙?殺すぞ、てめー!」
気の毒だけど関わらないのが一番だ。
そう思った僕は、次の青年の言葉に足を止めた。
「俺なんて死んだ方がいいのかもな。生きているだけ無駄だしよ……」
何を言っているんだ、彼は。
死んだ方がいい?
生きているだけ無駄?
どうして………?
「あ?なんだテメェは?」
生きれるのに、生きようとしないんだ?
目の前が真っ赤になった。
気がつけば僕は、チンピラの一人を殴り飛ばし、一人の首を絞めていた。
「な、何しやがんだ!?」
「………消えろ。僕の目の前から、今すぐにだ。」
首を掴んでいた男を地面に放り投げる。
「なんだよ、コイツ。頭イかれてんじゃねーのか?」
チンピラ達は、吐き捨てるように言い、去っていく。
僕は呆然と立っていた青年に向き直った。