泣いていたのは、僕だった。~零~
side隆
何気なく呟いた言葉に通りすがりの男が反応した。
「生きたくても生きれなかった者が居るのに。」
男はそう言って何度も壁を殴りつけた。
それこそ、血が滲むまで。
俺はただ呆然と見ていた。
「――どうして!?」
一際強く壁を殴りつけ、男の動きが止まった。
生きたくても生きれなかった者……か。
「俺も知ってるよ。そういう奴ら。」
昴…………。
数年前の出来事が昨日の事のように思い出される。
「知ってるからこそ、生きることに俺は……罪悪感を覚える。」
みんな俺にとって、かけがえのない存在だった。
「生きる意味を見つけられない。」