泣いていたのは、僕だった。~零~
「警部、この書類なんですが」
「今一服中だ。あとで確認する。そこ置いとけ」
年若い部下は言われたとおり書類の束をデスクの上に置き、そのまま立ち去っていった。
何枚かに目を通し、アイツに回せそうな仕事を探す。
二、三枚紙を封筒に入れ、そのまま封をした。
そういえばアイツ、珍しいモノを拾ったとか言ってやがったな。
「……たまには直接届けるか。」
俺は立ち上がり、車のキーを手に取ると、外に出た。
出る時、さっきの年若い部下に声をかけた。
眉を寄せたが、部下は了承したのでそのまま出てきた。
走らせる車の向かう先は、古林真司の住む家だ。
俺は時々こうして真司に仕事を回す。
凶悪犯を対象にした殺しの仕事を。
俺がアイツに初めて出会ったのは、アイツが実の母親を手にかけた時だった。