泣いていたのは、僕だった。~零~
「でもさ。こんなのあんまりだよね…………。ヒドいよね…………。守りたかったのに、ただ……守りたかったのに。守る方法がこれだなんてさ。」
どうしてそう思ったのかは分からない。
けれど直感的に俺は思った。
被害者はコイツなんじゃないかと。
「おじさん?何してるの?」
「うっせー、黙ってついてこい。」
気がつけば俺はその場から少年を連れ出していた。
間違いなくコイツは人殺しで、罪人で。
なのに放っておけなかった。
「僕のこと捕まえないの?」
「そういう気分じゃなくなった。」
「気分で決めちゃダメでしょ。」
「大人のやることに口出しすんな。」
「はいはい。」
俺はこの日、罪人を助けた。
理由は未だに分からない。
もちろんその後、騒ぎになったことは言うまでもあるまい。