泣いていたのは、僕だった。~零~
ドアが開き、中から青年が顔を出した。
「なんか呼んだか?」
「こっちおいで。」
彼は真司の指示通りにこちらに近付いてきた。
そして真司の隣に腰を下ろす。
「……もしかして拾いもんって」
「そ。珍しいでしょ?」
そりゃ珍しいさ。
人なんてそうそう拾わん。
「翔一って言うんだ。こっちは皆保警部。いつも仕事くれる人だよ。」
「よろしくな、おっちゃん!」
……おっちゃんって。
「お兄さんと言え。お兄さんと」
「おっちゃんの方が言いやすい。細かいこと気にすんなって。」
屈託なく笑う顔に毒を抜かれた。
「で、もういいか?今ゲームの途中なんだよ。」
「うん、いいよ。ごめんね。」
翔一はせわしなくソファーから立ち上がり、隣の部屋へと戻っていった。
「ビックリした?」
「そりゃな。どうしたんだ、あれは?」
「拾った。」
「訳ありか?」
「たぶんね。」
俺は胸元から煙草を取り出す。
「あまり依存するなよ。千明の時みたいにな。」
「………うん。」
真司、俺はなお前の幸せ願ってんだぜ。
幸せになってもらいてぇんだ。
この世に一人ぐらい、そう思う奴がいてもいいだろう?