泣いていたのは、僕だった。~零~
皆保警部からの通達で一つ仕事が入った。
支度をしていると1ヶ月ほど前拾った野良――翔一が夢中になっていたゲームから、視線を僕に移した。
「どっか行くのか?」
「うん。ちょっと仕事にね。」
「ふーん……」
翔一には僕がどんな仕事をしているのか話していない。
そんな必要もないと思ったから。
でもちょっとした好奇心が湧いた。
僕の仕事を見たら、翔一はどんな反応をするだろう?
この純粋無垢な存在は、汚れを見ても、その身を黒く染めることはないのだろうか?
「翔一も一緒に行く?」
「え?いいのか?仕事だろ?」
「別にかまわないよ。」
うーん…と考えた後、翔一は行くと言って用意を始めた。
「仕事ってどんな事すんの?」
「ん?掃除だよ。」
「清掃員?」
「そう。……この世のね。」
翔一は首を傾げ、不思議そうに僕を見た。
一度死を受け入れた君は…
他人の死を目の前に、一体何を考えるのだろう?