泣いていたのは、僕だった。~零~
廃屋の入口で翔一は不思議そうに僕を見た。
「今日はここの掃除なのか?」
「浅丘 貴世(アサオカ キヨ)27歳、男性」
「え……?」
「幼児三人を殺害、逃亡。」
「何言ってんだ?」
眉を寄せて、翔一は僕を見る。
「今回掃除するモノだよ。」
「掃除って……人間が?」
「僕の仕事は警察に依頼された凶悪犯を捕獲または始末すること。掃除屋って呼ばれてる。」
「………殺すってことか?」
「時にはね。」
笑みを作って僕は廃屋へ足を進めた。
数歩後を翔一が追いかけてくる。
中は埃っぽく、物音一つしない。
「なぁ、本当にこんな所に――」
「静かに。」
翔一の口に人差し指を当てて、閉じさせる。
「合図をしたら、床に伏せて。」
「え………」
翔一が目を丸くした刹那、
「伏せて!!」
銃声が二発鳴り響いた。
一発は僕達の頭上を通り過ぎ、もう一発は僕達の視線の先の男に命中した。
「な、に……?」
状況が掴めていない翔一は呆然と男を見つめた。
「もしかして撃ったのか?」
「うん。」
「どうして?」
僕は立ち上がり、服についた埃を払った。