泣いていたのは、僕だった。~零~
「撃たなきゃやられてた。」
「でもいきなり殺す必要なんて――」
「ダメなんだよ。それじゃ生き残れない。世の中は……」
立ち上がった翔一を見据えた。
「世の中は甘くない。」
「………これがお前の仕事なんだな。」
「うん。」
しばらく翔一は考えるように難しい顔をして俯いた。
「じゃあ俺も手伝う。」
「―――は?」
唐突の言葉に僕は瞠目した。
「この仕事手伝うって言ったんだよ。」
「……………」
顔を上げてまっすぐ僕を見据えた瞳。
あまり見続けると逸らしてしまいたくなる。
「ふふふ………あはははは」
「な、何笑ってんだよ?」
「いや……あはははは。」
無垢な存在は何色にも染まり、何色にも染まらない。
「本当に手伝うつもり?」
「だからそう言ってんだろ。それに……この仕事手伝ったら、早くお前のこと殺せるかもしれないだろ。」
「ああ、そうか。そうだね。」
本当、眩しい存在だ。
「じゃあ頑張ってね。」
「………変なやつ。」
翔一は横目で僕を睨んだ。
僕はただ笑っていた。