泣いていたのは、僕だった。~零~
町から外れた古びたアパートに、俺は最近通い詰めている。
手土産は決まって卵。
今日も卵を引っさげて、アパートのドアに手をかける。
「邪魔するぜー」
声をかければ奥から男が姿を現す。
「いらっしゃい、隆。また卵ってことはオムライスですか?」
男――創は呆れたように笑い、俺から卵を受け取った。
「お前が作ったのが一番旨いからな。」
「それはどうも。今作りますから、少し待っていてください。」
そう言って創はキッチンへと入っていく。
俺はと言えば卵と一緒に買ってきたビールを、ソファーに座って煽る。
この部屋は男一人暮らしには似つかない物がいくつかある。