泣いていたのは、僕だった。~零~
俺はそっぽを向いた。
「立場もクソも俺は継がねえよ。」
「継ぐ継がねえの問題じゃねぇんだよ。」
親父は顔をしかめて奥へと戻っていく。
「んだよ、クソじじぃ」
「若のことが心配なんですよ、四代目は。」
「心配なら殴るなってんだよ。」
「若、四代目はアナタより長く生きていやす。だから世の中の汚い部分をたくさん知ってらっしゃる。」
「なにが言いてぇ?」
「たまには大人の言うことも、聞いてみてくだせぇ」
親父の言ったこと。
京介の言ったこと。
分からない訳じゃなかった。
幼い頃から誘拐なんてしょっちゅうで、俺の意志とは関係なく、今いる立場は危険なものだってのは分かってた。
分かってたつもりだった。