護り人
目の前には梨沙がいて必死に何かを言っている。

禮人は梨沙に気が付いてすぐに近寄るが、二人のあいだには透明なガラスがあり、触ることが出来ない。

「梨沙、梨沙ー」

禮人はガラスを割ろうとしたが、

どんなに叩いても、蹴り飛ばしても割れなかった。
「梨沙、梨沙」

梨沙は泣きながら何かを言っているが禮人には聞こえない。

そのうち梨沙の体がすーと後ろに移動していき禮人の前から消えた。

「梨沙、梨沙」

禮人の声がむなしく響いた。


朝、禮人は自分の叫び声で目を覚ました。


真冬の朝、頼人は異常なほどに全身に汗をかいていた。

「梨沙」

胸騒ぎがする。

だけど、どうすることも出来なかった。
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