音匣マリア
小柳さんに取り上げられたクリスマスプレゼントの指輪は、結婚式用の台座に納まって俺達の前に差し出された。
菜月は驚いていたが、俺は構わず菜月の左手の薬指にそれを填めた。
震える指で菜月も俺の指に填める。
―――式は、滞りなく終了した。
その後は二人でホッとする間もなく、仕事に追われる羽目になったんだけど。
俺はタキシード姿のまま、模擬披露宴でフレアショーを敢行したし、菜月はお客さんに泣きついて感謝されていた。
どうやら俺達の式を見た菜月のお客さんがいたく感動してくれたらしくて、その場で結婚式の契約を取り付けたのだとか。それも二組も。
菜月は菜月で、仕事に頑張ってたんだな。
俺も頑張んねーと。
菜月とは仕事が終わってから、ホテルで落ち合う約束をした。
お互いの仕事が終わるまではまだまだかかるけど、こんなに満たされた気分になったのは久しぶりだ。
早く仕事を終わらせて、菜月に逢いたい。
「で、どうだったよ?吃驚作戦は成功したか?」
「……犯人はあんただったんですか……」
畜生、やられたぜ。
しかも何だかんだ言って、結局ヘルプに来てくれたのは中井さんだったし。
「俺は共犯だな。言い出したのは小柳だ。こないだナツが俺の店で全部喋ったの聞いて、『何かしてやりたい』つったのが始まりな」
そう言う事はせめて事前に教えてくれよ……。
「小柳達にしてみりゃ、客への良いプレゼンになるんだとよ。お前らはただのダシだ」
はあ!?人が人生かけた誓いを交わしてんのに何白々しく言ってくれてんの、この人!?
「……まあ、感謝はしてますけど。こういうハッタリ、二度としないで下さいよ?」
「おー怖ぇ怖ぇ。じゃ、店も落ち着いたみたいだし、俺は自分の店に帰るぞ」
どうしようかな。……癪に障るけど。
「……中井さん!……ありがとうございました!」
たまげた顔して中井さんは振り向いた。
「菜月と幸せになりますよ。中井さんと姉さんに負けないぐらいね。てか勝ってるし」
「ほざけ。お前なんかまだまだだ」
俺は中井さんの後ろ姿に頭を下げた。
助けてくれてありがとうございました、と心の中で呟きながら。
菜月は驚いていたが、俺は構わず菜月の左手の薬指にそれを填めた。
震える指で菜月も俺の指に填める。
―――式は、滞りなく終了した。
その後は二人でホッとする間もなく、仕事に追われる羽目になったんだけど。
俺はタキシード姿のまま、模擬披露宴でフレアショーを敢行したし、菜月はお客さんに泣きついて感謝されていた。
どうやら俺達の式を見た菜月のお客さんがいたく感動してくれたらしくて、その場で結婚式の契約を取り付けたのだとか。それも二組も。
菜月は菜月で、仕事に頑張ってたんだな。
俺も頑張んねーと。
菜月とは仕事が終わってから、ホテルで落ち合う約束をした。
お互いの仕事が終わるまではまだまだかかるけど、こんなに満たされた気分になったのは久しぶりだ。
早く仕事を終わらせて、菜月に逢いたい。
「で、どうだったよ?吃驚作戦は成功したか?」
「……犯人はあんただったんですか……」
畜生、やられたぜ。
しかも何だかんだ言って、結局ヘルプに来てくれたのは中井さんだったし。
「俺は共犯だな。言い出したのは小柳だ。こないだナツが俺の店で全部喋ったの聞いて、『何かしてやりたい』つったのが始まりな」
そう言う事はせめて事前に教えてくれよ……。
「小柳達にしてみりゃ、客への良いプレゼンになるんだとよ。お前らはただのダシだ」
はあ!?人が人生かけた誓いを交わしてんのに何白々しく言ってくれてんの、この人!?
「……まあ、感謝はしてますけど。こういうハッタリ、二度としないで下さいよ?」
「おー怖ぇ怖ぇ。じゃ、店も落ち着いたみたいだし、俺は自分の店に帰るぞ」
どうしようかな。……癪に障るけど。
「……中井さん!……ありがとうございました!」
たまげた顔して中井さんは振り向いた。
「菜月と幸せになりますよ。中井さんと姉さんに負けないぐらいね。てか勝ってるし」
「ほざけ。お前なんかまだまだだ」
俺は中井さんの後ろ姿に頭を下げた。
助けてくれてありがとうございました、と心の中で呟きながら。