音匣マリア
私はカウンターの隅に追いやられて、すっかり消沈してただボーッと海野さんがフレアの準備をするのを眺めていた。
もうやだ。早く帰りたい。
視線を海野さんから自分の手元にあるカクテルに目を移すと、耳元で「きゃあぁぁ!!」という嬌声がつんざいた。
……うるせ。
ふと見ると、そこに長身の海野さんより更に背が高い細身の男の人がカウンターの奥に立っている。
「予約なしにお前がフレア引き受けたっつーからよ。珍しい事もあるもんだと思って出てきた訳よ」
「ちょ、邪魔なんで引っ込んでてくんない?」
海野さんが不機嫌そうにその男の人を見やった。
けれども先輩達の黄色い声に阻まれて後の言葉は聞こえない。
「やだー!!海野さんが菜月狙いでつまんないからぁ、あたし中井さん狙う!!」
「あたしも中井さんがイイ!」
……あれ?でも待ってよ?この男の人の声、この姿……。
「もしかして、ヨッシー…じゃね?」
その男の人は振り替えって私を見た。
「あ?お前ナツか?なんでここにいる?」
やっぱり間違いない。
兄貴の高校時代からの悪友、中井芳樹だ。
今年28才になる私の兄貴は大学を卒業した後、今は高校の社会科の教師をやっている。
目の前にいる中井芳樹(なかい よしき・通称ヨッシー)は大学まで兄貴と一緒によくつるんでいたから、わたしとも面識があるんだ。
ヨッシーが店長を勤めるクラブには、私も兄貴に連れられて何回か遊びに行ったこともあったけど。
で、そのヨッシーがなんでここに?
もうやだ。早く帰りたい。
視線を海野さんから自分の手元にあるカクテルに目を移すと、耳元で「きゃあぁぁ!!」という嬌声がつんざいた。
……うるせ。
ふと見ると、そこに長身の海野さんより更に背が高い細身の男の人がカウンターの奥に立っている。
「予約なしにお前がフレア引き受けたっつーからよ。珍しい事もあるもんだと思って出てきた訳よ」
「ちょ、邪魔なんで引っ込んでてくんない?」
海野さんが不機嫌そうにその男の人を見やった。
けれども先輩達の黄色い声に阻まれて後の言葉は聞こえない。
「やだー!!海野さんが菜月狙いでつまんないからぁ、あたし中井さん狙う!!」
「あたしも中井さんがイイ!」
……あれ?でも待ってよ?この男の人の声、この姿……。
「もしかして、ヨッシー…じゃね?」
その男の人は振り替えって私を見た。
「あ?お前ナツか?なんでここにいる?」
やっぱり間違いない。
兄貴の高校時代からの悪友、中井芳樹だ。
今年28才になる私の兄貴は大学を卒業した後、今は高校の社会科の教師をやっている。
目の前にいる中井芳樹(なかい よしき・通称ヨッシー)は大学まで兄貴と一緒によくつるんでいたから、わたしとも面識があるんだ。
ヨッシーが店長を勤めるクラブには、私も兄貴に連れられて何回か遊びに行ったこともあったけど。
で、そのヨッシーがなんでここに?