音匣マリア
控え室に戻り、衣装係りさんに着替えを手伝って貰いながらドレスのファスナーを下ろしていると、ノックもなしにいきなりドアが開けられた。



部屋の中に入ってきたのは―――。




さっきのイケメンバーテンダー。




おいこら未婚でうら若い女の子の裸を堂々と覗き見るとは何事だ、ゴラァ!



……なんてメンチきって私の本性を初対面のイケメンに言える筈もなく、私はただ「きゃっ」と言って胸を隠した。



「あ…すみません、支配人がここにいるってきいたもんで…」

「支配人なら事務室にいるはずですよ」



含み笑いを堪えて、衣装係りさん達がそう彼を諭した。


「すみません、間違えました」


赤面しながら立ち去るイケメンを見送ったけど、あんた私の裸体を見たことは何とも思わないんかい!


それはそれでなんか腹立つ。



あのイケメンバーテンダー、なんて奴なんだよ!!



しかも奴が後ろ手で扉を閉める時に聞こえた、奴を誘う甘ったるい先輩達の声。


顔に騙されちゃいけない。


アイツは女の敵だと確信した。





――それが、私とアイツの最悪の出逢い――
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