音匣マリア
……そして、もう一人、蓮にとっては大事な存在の人にも私は紹介された。
蓮がバーテンになるきっかけになった、瀬名さんという40代後半の見るからにインテリジェンスな感じの人だ。
瀬名さんは全国的にも有名なソムリエで、よくマスメディアにも取り上げられているのだそう。
著書も幾つかあるし、雑誌や新聞にはコラムを載せているとの事。
往々にして知らなかった私は、蓮に瀬名さんの店に連れていって貰ったのに気が利いた事も言えず、自己嫌悪に陥ってしまう。
「この店の名前な、瀬名さんの娘さんの名前から取ってるんだよ。《Mayu's Bar》ってな」
蓮がそう教えてくれた。
「娘さんのお名前、《まゆ》ちゃんって言うんですか?」
それを聞いた瀬名さんが吹き出した。
「娘って言っても、菜月ちゃんとあんまり変わらない年頃だよ。この店も、開いてからはもう20年近くになるからねぇ」
瀬名さんは、懐かしむような目で店内を見回した。
瀬名さんって、そんな年に見えないよ。私と年が変わらないような子供さんがいるようには到底見えない、うん。
「……にしても、とうとう蓮も年貢の納め時ってヤツか。オンナ遊びは酷かったってのは聞いてたけどな。中井から」
あ、ヨッシーの事も瀬名さんは知ってるんだ?
「中井さんと俺の店は、瀬名さんが経営する店舗の一つな。俺も昔はソムリエになりたかったんだけど、駄目だったんだよ」
あれ?今、蓮てばさりげなく瀬名さんの一言を無視したよね?オンナ遊びが酷かったってそこ、突っ込みたいんですけど?
「無理矢理話題を替えたな。蓮はね、昔は煙草を吸ってたからね。煙草を吸うとワインの味も薫りも分からなくなるからソムリエにはなれないんだよ」
「あ、そうですか……」
えぇぇぇ。私が聞きたいのはそこじゃ無いんだけど。
蓮の昔の女性関係って、そこどうなの!?
「菜月ちゃん、眉間に皺寄ってる。蓮の昔の彼女達にはないものが菜月ちゃんにはあったんだよ。蓮が俺に彼女を紹介したのなんて初めてだから。自信持ちなって」
瀬名さんはそう言って、グラスにワインを注いでくれた。
その目が柔らかく微笑んでいたから、私はもう迷わず蓮との将来を夢見ても良いんじゃないかって、実感し始めたんだ。
蓮がバーテンになるきっかけになった、瀬名さんという40代後半の見るからにインテリジェンスな感じの人だ。
瀬名さんは全国的にも有名なソムリエで、よくマスメディアにも取り上げられているのだそう。
著書も幾つかあるし、雑誌や新聞にはコラムを載せているとの事。
往々にして知らなかった私は、蓮に瀬名さんの店に連れていって貰ったのに気が利いた事も言えず、自己嫌悪に陥ってしまう。
「この店の名前な、瀬名さんの娘さんの名前から取ってるんだよ。《Mayu's Bar》ってな」
蓮がそう教えてくれた。
「娘さんのお名前、《まゆ》ちゃんって言うんですか?」
それを聞いた瀬名さんが吹き出した。
「娘って言っても、菜月ちゃんとあんまり変わらない年頃だよ。この店も、開いてからはもう20年近くになるからねぇ」
瀬名さんは、懐かしむような目で店内を見回した。
瀬名さんって、そんな年に見えないよ。私と年が変わらないような子供さんがいるようには到底見えない、うん。
「……にしても、とうとう蓮も年貢の納め時ってヤツか。オンナ遊びは酷かったってのは聞いてたけどな。中井から」
あ、ヨッシーの事も瀬名さんは知ってるんだ?
「中井さんと俺の店は、瀬名さんが経営する店舗の一つな。俺も昔はソムリエになりたかったんだけど、駄目だったんだよ」
あれ?今、蓮てばさりげなく瀬名さんの一言を無視したよね?オンナ遊びが酷かったってそこ、突っ込みたいんですけど?
「無理矢理話題を替えたな。蓮はね、昔は煙草を吸ってたからね。煙草を吸うとワインの味も薫りも分からなくなるからソムリエにはなれないんだよ」
「あ、そうですか……」
えぇぇぇ。私が聞きたいのはそこじゃ無いんだけど。
蓮の昔の女性関係って、そこどうなの!?
「菜月ちゃん、眉間に皺寄ってる。蓮の昔の彼女達にはないものが菜月ちゃんにはあったんだよ。蓮が俺に彼女を紹介したのなんて初めてだから。自信持ちなって」
瀬名さんはそう言って、グラスにワインを注いでくれた。
その目が柔らかく微笑んでいたから、私はもう迷わず蓮との将来を夢見ても良いんじゃないかって、実感し始めたんだ。