総長が求めた光 ~Ⅳ獣と姫~
きっと彼女は待ってる。
「あいつ、ココア好きだし。そろそろお腹も減るだろうから匂いにつられて出てくるかも知れないしね」
そう言って笑えば一瞬驚いた顔をしたあとに
「来てくれたらいいな」
いつものように微笑む。
ここに来て確実にレナちゃんは笑うようになった。
以前は笑ったあとに難しい顔をしていたが今はそんなことはない。
でも、たまに遠くを見るように呆けることがある。
それは、シン達のことを考えているのかそれとも
「今日もヒサキャベツ食べてたね」
恋焦がれているであろう我が総長を思ってか。
「そうだね、最近面白くないことがあったみたいでキャベツだけだね」
「面白くないこと?」
「あいつ、自分のだって思ってたものがそうじゃないって主張する奴らが現れたからね」
自分の匂いをつけて、牙を立て歯型を残し自分の名前以外を呼ぶ声なんて出ないように喉を食いちぎりたいのはお前だけじゃないんだよ。
ここには、何かしらに飢えた獣しかいないんだから。