総長が求めた光 ~Ⅳ獣と姫~
聞いているあいだに滲んでいった視界。


ただ、聞いてるあたしなんかより話してるサヨさんの方が何倍も辛いはず。


そう思って、言い聞かせて。


必死に歯を食いしばった。


だけど、もう、限界だった。


「ありがとう。話してくれて」


サヨさんを抱きしめる腕に力を込めながら、搾り出した声。


ため息のように短い息を吐いたあと、乱れていくサヨさんの呼吸。


「ふっ‥‥う‥‥っ」


あたしの肩に、温かいものが伝わる。


あたしは、何も言わなかった。


言葉が出なかったっていうのもあるけど、こんなとき下手な言葉なんて言いたくない。


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