蜜味ファインダー
シャッターの音が耳にこびりつき始めた頃。
彼がカメラを下ろしたかと思えば──不意打ちの、キス。
「大丈夫、誰も居ないよ」
私の顔を見つめて、妖しく微笑む。
「偽物は撮らない主義だ、って言ったでしょ」
ベッド脇にあった小瓶を開け、彼はそれに指を入れる。
「君は蜂蜜を舐めているだけだから」
彼の指が私の唇に触れる。口内に広がった、甘い味。
彼はそれを舐め取るようにキスをして、シャッターを切る、を繰り返した。
「いい顔だ」
彼女がどこまで知っていて、あの台詞を言ったのかはわからない。
──でも。
夢が、覚めなければいいのに。
そう思いながら、私は、彼に身を任せていた。