浮気は、いいよ。
・・・・それでは、腹を括りましょう。
パソコンの隣に置いてあるペン立てからハサミを引き抜く。
坊主にしたら、即刻ヅラ買いに行こう。
突然有給取った挙句、坊主で明日出勤したら、確実に課長にシバかれる。
無造作に髪の毛を掴むと、鏡も見ずにハサミを入れる。
ハサミの刃を閉じようとした時
「・・・・・ズルすぎるでしょ、幸太郎」
優里がオレの手を止めた。
「・・・・・それじゃあ、なんかワタシが悪モノになっちゃうでしょ」
本当に優里は優しい。
やっぱり、オレの頭を丸めるつもりなどなかったんだ。
でも
「・・・・・優里、手危ないから退けて。 切れちゃうよ」
坊主以外の方法など思いつかない上に、考えてる時間もない。
今、ここで優里に信じてもらわなければ、もう次はない。
「坊主にするなら沙耶香にやってもらいなよ。 沙耶香ならキレイに丸めてくれるよ。 さっき幸太郎の言った事が本当なら、幸太郎は沙耶香にも謝るべきだから。 幸太郎、最低」
そう言いながら、優里はオレの手を止める力を強めた。
「うん。 最低」
頑なにここで坊主になるのも違う気がしてハサミを置いた。