浮気は、いいよ。





「・・・・・優里はもう、オレの事は好きじゃない??」




この前答えてもらえなかった質問を、もう1度ぶつける。





「言ったじゃん。 『ワタシも同じ』って」





「それじゃあ、分かんない。 ちゃんと言って」





ちゃんと聞きたい。 ちゃんと優里の口から聞きたい。




さっきまで穏やかだった優里の顔が、だんだん険しくなって




みるみるうちに目に涙が溜まった。





「・・・・・嫌いになれないから困ってるんじゃん!! 好きなのに赦せないから苦しいんじゃん!!」





優里の涙がカーペットに落ちて、染みを作った。




「なんで好きなのに離婚しなきゃなんないんだよ」




目の前で優里が泣いているのに




優里が『好きだ』と言ってくれた事が嬉しくてしょうがない。







やっぱり優里を、手放せない。






「お互い赦せないからでしょ!!」




『分かりきっている事聞くな』と言わんばかりに、優里が泣きながら怒り始めた。




「お互い赦せないと、なんで離婚しなきゃなんないの??」




赦せない。 浮気した優里を赦せない。




でも、優里が『好きだ』と言ってくれるだけで、こんなにも満たされるから。




「蟠りがあるからでしょ!!」




「でも、お互いが好きなんだよ??」




「でも!!・・・・・・・・・・」





優里が反論を失った。




と言うか・・・・・





「幸太郎の揚げ足の取り方、えげつない」




「気付いたか。 オレ、こっからは何を言われても『でも、お互いが好きなんだよ??』しか言う気ない」




「そんな気がしたから言うのやめた」




「うん。 知ってる」





オレの開き直り具合を見て、優里が溜息を吐きながら少し笑った。





「『好き』なんて、言わなきゃ良かった」




「後の祭りだな、優里」




「後悔先に立たずだ」




「後悔した?? 『好き』って言って」
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