浮気は、いいよ。


「………いつも通りだよ」



出てきた言葉は当たり障りのないモノ。



「………じゃあ、寝室で見よ。 オレも見たい」



逃げ場を失う。



寝室のテレビを付けて、幸太郎が待つベッドに向かう。



となりに座る時でさえ軋むベッド。



思い出しては耳に貼りつく、レコーダーの音に、胃がむかつく。



ドラマに集中しよう。



テレビを凝視するワタシに



「やっぱ、明日昼間に見なよ」



幸太郎が顔を近づけてきた。



キスを、したくないワケじゃない。



でも。



ワタシはされたことがなかったんだ。



幸太郎が沙耶香にしていた様な、貪り合うみたいなキスは、ワタシにはしない。



きっと、幸太郎は今までずっと『夫婦だから』と言う義務感でワタシとキスを、してくれていたんだ。
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