浮気は、いいよ。
「………風邪気味で………移ると悪いから」
顔を逸らして、そっと幸太郎の胸を押 した。
「いいよ、気にしなくて。 優里の風邪、ちょうだい」
幸太郎の手に、逸らした顔を固定され、キスをされた。
幸太郎のキスは、柔らかくて、暖かくて、優しい。
でも、決してワタシを求めてはいない。
沙耶香としていた、あのキスの音が耳から離れない。
ゆっくり押し倒されると、しつこいくらいに軋むベッド。
胃がキリキリしだす。
痛い。 苦しい。 辛い。
ワタシの意志とは関係なく、身体は火照る。
でも、意志通りに涙は溢れそうになる。
意志と身体がバラバラで、どうすればいいのか分からない。
「…………ごめん、ダメだ……吐く」
そんなワタシに答えをくれたのは、毎度お馴染みの吐き気だった。