浮気は、いいよ。
「・・・・沙耶香、慰謝料の話、悠介くんにしたんだ??」
「え?? してないよ?? なんで??」
沙耶香がスプーン止めてオレを見た。
「・・・・さっき、悠介くんから電話きて、悠介くん、知ってたから」
「・・・・優里から聞いたんじゃない?? 優里にメールしたから」
沙耶香の言葉に顔を強張らせると、沙耶香はオレの『優里には知られたくなかった』という気持ちを見透かしたのだろう。
沙耶香はビーフシチューの具をスプーンで無意味に刻んでは、小さな溜息を漏らした。
オレが悪い。
分かってる。
でも、自分の思う様にいかないこの状態にイライラしているオレに、自分のイライラをワザと見せてくる沙耶香がうっとうしく感じた。
自分勝手。
分かってる。 分かってる。
でも
「ゴメン、今日は家に帰る。 仕事の資料取りに行かないとだから」
自分が悪いのに、沙耶香に苛立ちをぶつけてしまいそうだから。
オレは沙耶香からも逃げる。