浮気は、いいよ。



「・・・・沙耶香、慰謝料の話、悠介くんにしたんだ??」




「え?? してないよ?? なんで??」




沙耶香がスプーン止めてオレを見た。




「・・・・さっき、悠介くんから電話きて、悠介くん、知ってたから」




「・・・・優里から聞いたんじゃない?? 優里にメールしたから」




沙耶香の言葉に顔を強張らせると、沙耶香はオレの『優里には知られたくなかった』という気持ちを見透かしたのだろう。




沙耶香はビーフシチューの具をスプーンで無意味に刻んでは、小さな溜息を漏らした。








オレが悪い。





分かってる。







でも、自分の思う様にいかないこの状態にイライラしているオレに、自分のイライラをワザと見せてくる沙耶香がうっとうしく感じた。






自分勝手。







分かってる。  分かってる。





でも








「ゴメン、今日は家に帰る。 仕事の資料取りに行かないとだから」







自分が悪いのに、沙耶香に苛立ちをぶつけてしまいそうだから。







オレは沙耶香からも逃げる。
< 84 / 159 >

この作品をシェア

pagetop